食堂侍

あてどなく食堂を彷徨う・・・拙者「食堂侍」でござる

二番、副菜にあらずの巻



戸を引いた。

薄暗い中、拙者は声をかけたのだった。
 
チカチカと音を立てて付く蛍光灯。
出てくる老婆。
その歩みに拙者は思わず一番高価な定食「カツライス」を頼んだ。

拙者は軽い疑問を膨らますべく席に座り茶をあおった。

「カツ」・・・おそらくとんかつ・・・であろう。
問題は「ライス」だ。


もちろん米の事なのは分かっている。
しかしだ。
なぜ「ライス」と表記した?
横文字から程遠いこの店構えで?

もしかすると「カレーライス」よろしく皿に持ったご飯の上にいきなりRide onしているかもしれない。
はたまたもしかすればソースカツ丼のような風体でどんぶりに乗ってお出ましかもしれない。
しかしながらライスとわざわざ横文字で書いてある辺り、何かトリッキーなかたちでおでま


出た。


普通だ。
普通すぎるくらい普通の「とんかつ定食だ」。

真ん中に鎮座する主役。

雪駄ではない。
とんかつだ。
まぎれもない「食堂のとんかつ」の薄さを誇っている。

付け合せの彩りも申し分ない。

代わりは許されない「味噌汁」で口を潤し、まずはメインの「カツ」、からの「ライス」を掻き込むのだった。

そして副菜へ。
切り干し大根が炊いてある。

一口放り込んだ。




そして拙者は

「お母さん、この切干大根、おかわり!!


できないならこのカツ返すから!

食いかけだけどっ!


お母さん!
これメインでいいんじゃね?

「切り干し大根定食」でいいんじゃね?あ!

「切り干し大根ライス」?・・・いいんじゃね??」

と叫んだ妄想が暴走するような旨さ。


とりあえずせっせとぞうり・・・カツをこなし切干をメインに白米を制覇していく作戦に切り替えていくのであった。


拙者は副菜を主役にした「な日替わり」が出てくれる日を密かに望んでいる。